臨床研究適正評価教育機構

お知らせ

ディオバン事件の判決公判を当機構桑島理事長が傍聴しました。

ディオバン裁判、白橋被告無罪

高血圧治療薬ディオバンの臨床効果を検証したKYOTO HEART Study論文に不正の疑いがあるとして,製薬会社ノバルティス社の元社員が逮捕,起訴された,いわゆるディオバン事件の判決が3月16日(木)午後1時30分,東京地方裁判所であった。辻川靖夫裁判長は,雑誌に掲載された学術論文は薬事法で規制された誇大広告には当たらないとして,白橋伸雄被告に無罪を言い渡した。 一方の被告であるノバルティス社に対しても無罪を言い渡した。

桑島理事長の見解

研究不正を法律で裁くことの難しさを示した判決―被告人の改ざんは認めるー

裁判長は,白橋被告はデータを改ざんしたという検察側の主張を全面的に認めた。しかし,研究論文を雑誌に掲載することは必ずしも薬事法でいう誇大広告には該当しないという見解により無罪判決となった。この点に関して,厚労省の研究論文不正は違法であるという見解と異なる判決となった。 裁判長は,41例の水増し,およびカルシウム拮抗薬論文の定義に基づかない群分けについても白橋氏による改ざんであることを明瞭に認め,被告の供述は信用できないという見解を示した。本試験が立件された本当の目的は,ねつ造の有無とねつ造者を明らかにして真実を追求することでしたので,そういう意味ではこの裁判は大きな意義があった。有罪無罪は法律解釈の世界であり,科学分野とは次元が異なることを再認識させられた。しかし今回の判決結果は,白橋氏が関与して慈恵ハート,VART,名古屋ハート,SMARTなども白橋氏によるねつ造論文である可能性が一段と高まったといえよう。白橋被告,ノバルティス社は無罪であったが,今回の裁判で罪に問われた薬事法違反は成立しないということであり,企業職員による改ざんの事実とプロセスが明らかになった以上,企業は反省して襟を正すべきである。

臨床研究適正評価教育機構理事長 桑島 巌